ベネチアンプラスターのサンプル作成|ロンフランシス グラッセロ・カラーラの艶と奥行き

ベネチアンプラスターの魅力は、写真だけではすべてを伝えきれません。
大理石のような艶、塗り重ねによる奥行き、鏝の動きがつくる濃淡。そして、光の向きや見る角度によって変わる表情。その仕上がりを確かめるために欠かせないのが、実際の材料と工程でつくるサンプルです。
今回は、ロンフランシス カラーラを下塗りに使用し、ロンフランシス グラッセロで仕上げたベネチアンプラスターサンプルを作成しました。
この記事では、サンプルをつくる理由、カラーラとグラッセロの役割、塗り重ねから磨きまでの工程を、職人の視点で紹介します。
ベネチアンプラスターのサンプルは「色見本」だけではない
ベネチアンプラスターは、石灰系のプラスターを薄く塗り重ね、鏝で押さえながら磨くことで、石のような艶と奥行きをつくる意匠左官仕上げです。「ヴェネチアンプラスター」「Venetian Plaster」と表記されることもあります。
一般的な塗装の色見本は、色番号や小さなチップで方向性を確認できます。しかし、ベネチアンプラスターは色だけでなく、次の要素が仕上がりを左右します。
- 鏝跡の大きさと流れ
- 塗り重ねによる色の濃淡
- 艶の強さ
- 光を受けたときの反射
- 正面と斜めから見たときの表情
そのため、サンプルは単なる色見本ではありません。色・模様・艶・光の見え方を、設計者・施工者・施主で共有するための小さな設計図です。
ある程度の面積があるため、鏝の動きや模様の間隔、光が横から入ったときの艶まで確認しやすくなります。


ロンフランシス カラーラとグラッセロの役割
Ron Francis Carrara(ロンフランシス カラーラ)とRon Francis Grassello(ロンフランシス グラッセロ)は、鏡面仕上げに用いられるベネチアンプラスターの材料です。
公式情報では、カラーラはグラッセロの下塗り材、グラッセロは上塗りの仕上げ材と説明されています。石灰系の材料を薄く重ね、最後に磨くことで、均一な塗装とは異なる濃淡と奥行きが生まれます。
| 材料 | 主な役割 | サンプルで確認するポイント |
|---|---|---|
|
RON FRANCIS
カラーラ
CARRARA
|
下塗り・土台づくり |
下地の安定、模様のベース、 上塗りとのつながり |
|
RON FRANCIS
グラッセロ
GRASSELLO
|
上塗り・最終仕上げ |
艶、透明感、濃淡、鏝の動き、 磨きによる光の反射 |
仕上がりだけを見るとグラッセロの艶に目が向きますが、その表情を支えているのはカラーラでつくる土台です。最終工程だけではなく、見えなくなる部分から整えることが、完成度につながります。
材料の基本情報は、RonFrancisArt公式「Grassello・Carraraとは」でも確認できます。
サンプルの作成工程

1.仕上がりの方向性を決める
最初に決めるのは、色だけではありません。
- 空間の用途
- 壁や天井などの施工場所
- 周囲の床・家具・建具の色
- 自然光と照明の当たり方
- 求める艶の強さ
- 鏝模様を静かにするか、動きを見せるか
同じ色でも、艶と模様のつくり方によって印象は大きく変わります。ホテルライクな静かな壁にするのか、店舗の主役になる強い表情にするのか。完成後の空間を想像しながら、サンプルの方向性を組み立てます。
2.サンプルボードの下地を整える
艶のある意匠仕上げほど、下地の状態が表面に影響します。
サンプルボードの不陸や傷を確認し、塗り面を整えます。小さなサンプルでも、この工程を簡略化すると、磨いたときに下地の乱れが見えやすくなります。
完成時には見えなくなる工程ですが、仕上がりを安定させるための重要な準備です。
3.ロンフランシス カラーラで土台をつくる

整えた下地に、ロンフランシス カラーラを塗り付けます。
カラーラは、上塗りとなるグラッセロを受け止める下塗り材です。単に全面を覆うのではなく、最終的な模様や奥行きを想定しながら、鏝を動かします。
ここでつくった流れは、上からグラッセロを重ねたあとも、表情の土台として残ります。サンプル作成では、仕上げ面だけでなく、この段階の写真も残しておくと、完成までの変化が伝わりやすくなります。
4.ロンフランシス グラッセロを薄く塗り重ねる

カラーラでつくった土台の上に、グラッセロを薄く塗り重ねます。
一度に厚く付けて表面を覆うのではなく、薄い層を重ねながら濃淡と奥行きをつくります。鏝を入れる方向、ストロークの長さ、材料が重なる位置によって、同じ色でも表情は変わります。
塗る回数や乾燥の見極めは、色、室温、湿度、求める艶によって調整します。その時の材料と表面を見ながら判断することが大切です。
5.鏝で押さえ、艶を引き出す

グラッセロの表面を鏝で押さえ、磨きながら艶を引き出します。
鏝圧、角度、材料の乾き具合。その組み合わせで反射と濃淡が変わります。塗り終えた瞬間ではなく、磨きによって表情が立ち上がることが、グラッセロの大きな魅力です。
6.光を変えて最終確認する

完成したサンプルは、正面から見るだけでは判断しません。
- 自然光の近く
- 室内の照明
- 横方向から当たる光
- スポットライトを想定した斜めの光
- 近距離と少し離れた位置
光を正面から受けたときは色が落ち着いて見え、斜めから受けたときは艶が強く現れることがあります。実際の施工場所に近い光で確認することで、完成後のイメージとの差を減らせます。
完成したサンプルから確認できること
小さな色見本では分からない情報が見えてきます。
艶の強さ
グラッセロを磨くことで、光を受けた部分に上品な艶が現れます。真正面では静かに見え、見る位置を変えると反射が浮かび上がるため、壁そのものに動きが生まれます。
色の濃淡と奥行き
複数の薄い層が重なることで、単色でも一様には見えません。色の濃い部分と淡い部分が自然につながり、平らな面の中に奥行きを感じられます。
鏝の動き
ベネチアンプラスターは、職人の鏝の動きがそのまま意匠になります。模様を細かく入れるか、大きな流れをつくるかによって、空間に与える印象も変わります。
照明との相性
艶のある壁は、照明計画と切り離して考えられません。ダウンライトや間接照明の位置によって、壁の見え方は大きく変化します。サンプルを立て、実際の照明方向に近い角度から光を当てる確認が有効です。
サンプルと実際の壁が完全に同じにはならない理由

サンプルは完成イメージを共有するために重要ですが、実際の壁をそのまま小さくしたものではありません。
施工面積が大きくなると、鏝のストローク、見る距離、自然光の入り方が変わります。また、ベネチアンプラスターは手仕事で仕上げるため、模様を機械的に完全再現するものではありません。
確認するべきなのは「模様を一つずつ同じにすること」ではなく、次の方向性が共有できているかです。
- 色味の範囲
- 艶の強さ
- 模様の細かさ
- 全体の動き
- 光を受けたときの印象
サンプルで基準をつくり、その基準を現場の面積と光に合わせて展開する。そこに意匠左官職人の判断が必要です。
ベネチアンプラスターのサンプルを見るときのポイント
サンプルを確認するときは、机の上に寝かせた状態だけで決めないことをおすすめします。

- 実際の壁と同じように立てて見る
- 正面と斜めの両方から見る
- 昼と夜で見比べる
- 使用予定の床材・家具・建具と並べる
- 近くと離れた位置の両方から見る
特に艶のあるグラッセロは、光の角度で印象が変わります。店舗やショールームでは、商品やサインに当てる照明との関係も確認しておくと、空間全体を設計しやすくなります。
サンプル作成は、完成後の認識違いを減らす工程
ベネチアンプラスターは、色番号だけで仕上がりを決める材料ではありません。
ロンフランシス カラーラで土台をつくった後にグラッセロを薄く塗り重ね、鏝で磨く。その一連の工程によって、艶・濃淡・奥行きが生まれます。
サンプル作成は、見た目を確認するためだけの作業ではなく、施主・設計者・施工者が同じ完成イメージを共有するための大切な工程です。
株式会社フロアーラボラトリーは、ロンフランシス グラッセロ・カラーラ認定施工店として、大阪を拠点にベネチアンプラスターのサンプル作成・施工相談に対応しています。
住宅、店舗、ショールーム、ホテルなど、空間の用途や照明に合わせて色・模様・艶をご提案します。
壁から、世界観をつくる。
よくある質問
ベネチアンプラスターは好きな色でサンプルを作れますか?
空間のイメージや周囲の素材に合わせて、色味を調整したサンプルを作成できます。希望色の画像だけでなく、床材・家具・建具などの情報も共有していただくと、空間全体に合わせた方向性を検討しやすくなります。
サンプルと実際の壁は同じ模様になりますか?
色、艶、模様の細かさなどの方向性はサンプルを基準にします。ただし、手仕事による仕上げのため、鏝跡を一つずつ完全に同じ形で再現するものではありません。施工面積や光の入り方によっても見え方が変わります。
サンプルはどのように確認すればよいですか?
実際の壁と同じように立て、自然光・室内照明・斜めからの光で見比べてください。使用予定の床材や家具と並べ、少し離れた位置から全体を見ることも大切です。

